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定年後の家計、食費や住宅ローンより怖いもの

定年後の家計の守り方③

◆60歳から急激に増える、冠婚葬祭の費用

 冠婚葬祭費はそもそも、収支計画の対象になっていない家庭が多いと思います。年間にいくらかかるか、なかなか検討をつけるのが難しい内容ですから、当然と言えば当然なのですが、私はこの冠婚葬祭費についても、予算を設ける必要があると考えています。
 というのも、冠婚葬祭にかかる費用は、60歳を迎える頃からいきなり増えるからです。

 今50代から60代くらいの方は、親御さんに兄弟が多いですよね。日本人の平均寿命を考えると、ちょうど自分が60歳ぐらいのタイミングで、そうした親戚の人たちが亡くなってしまう可能性は高いです。すると、葬儀にかかる費用が自然と増えてきます。
 また自分の子ども世代に目を向けると、年齢的に20代後半から30代前半になり、結婚・出産をする子が出てきます。そうしたら今度はお祝いが必要になる。その上、お祝いが一回で済めばいいですが、今は一度離婚して再婚するケースも珍しくないですから、馬鹿にならない金額が出ていくことになってしまいます。

 冠婚葬祭費は、気持ちなのですが、お付き合いも考えないと際限なくかかってしまいます。ある程度のルールを決めたほうがいいでしょう。私の家でも、ケースごとにだいたいどのくらいお金をかけるかを定めています。例えば、おばにあたる人物が亡くなったときは、葬儀に出すお花は一個にして、お供えはしない。初七日のお香典は1万円、という具合です。ルールを決めておくと、誰にいくらお金をかけたか忘れずに済むという利点もあります。

 

◆家電の買い替えを考慮していない人は、意外に多い

 60歳になったら突然、ということではありませんが、家にある白物家電には寿命がありますから、買ってから10年以上経つと壊れるものも当然出てきます。ある程度壊れる時期を予測して、計画的に貯金ができる人はいいですが、定年後の家計は「家電買い替え費用」のためだけに貯金ができるほどの余裕は、あまりないかと思います。
 そこで、「一時金」という名目で、年単位で少しずつお金を貯めることをおすすめします。

◆「一時金」にも予算を

 医療・介護費については、保険に入ることなどによって、将来かかるであろうお金を事前に用意しておく人も多いと思います。が、一時金は金額やタイミングが不定であることから、なかなか管理の対象にならないことがほとんどです。また、退職金があれば一時的な支出があってもなんとかなると、思っている人ももしかしたらいるかもしれません。ただ、不意の支出こそ、定年後の家計にとっては最も痛い。
 ですから、もしもの時のために、医療費などとは別に一時金の予算を組んでおくと良いでしょう。目安として、年間で平均20万円ほどを一時金の予算ということで確保しておくと、家計の負担も少なくなりますし、収支を安定させることができると思うので、ぜひ実践してみてください。

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井戸 美枝

いど みえ

CFP®、社会保険労務士。神戸市生まれ。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。社会保障審議会企業年金部会委員。確定拠出年金運用に関する専門委員会委員。経済エッセイストとして活動し、人生の神髄はシンプルライフにあると信じる。

近著に『ズボラの人のための確定拠出年金入門』(プレジデント社)『定年男子定年女子』(日経BP社)『身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと』(東洋経済新報社)などがある。


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